クリニックの現場では、同じ確認や準備が複数回行われる場面が少なくありません。
こうした状況は、医療スタッフの皆さまの意識や能力によって生じるものではなく、業務が発生する前提となる「設計構造」によって自然に生まれているケースが多く見られます。本コラムでは、業務が重複する現象を事実として整理し、その背景にある設計の考え方を、株式会社SPACE PRODUCEの小林佐理が解説します。
人は「安全側の行動」を取る
業務設計の分野では、人は与えられた構造の中で、最も安全だと判断できる行動を取るとされています。
確認や準備の完了条件が明確でない場合、見落としを避けるために再確認や再準備を行うことは、合理的な判断です。
美容クリニックでは、患者対応や施術準備に複数の職種が関わります。そのため、「誰が最終的に担うのか」が曖昧な業務ほど、複数人が同じ作業を行いやすくなります。
業務の責任範囲が空間と結びついていない

業務は、マニュアルや言葉だけで成立するものではありません。実際には、作業が行われる場所や物の配置が、無意識のうちに業務範囲を定義しています。
同じ棚に複数職種がアクセスする、同じカウンターで異なる確認作業が行われるなど、空間が業務の境界を示していない場合、業務が重なることは構造的に避けられません。
現場で起きている具体的な重複例
実際の現場では、次のような状況がよく見られます。
・同意書の内容を、受付・カウンセラー・看護師がそれぞれ確認している
・施術準備の完了状態を、担当者と次の担当者が別々に確認している
・在庫補充を、気づいた医療スタッフの皆さまが各自の判断で行っている
これらはいずれも、ミスを防ぐための行動として成立しています。重複は、慎重な運営の結果として生まれている側面もあります。
重複そのものではなく「整理されていない構造」
重要なのは、重複が発生していること自体を問題視することではありません。
業務の責任範囲や完了地点が構造として定義されていないまま、運営が続いている点にあります。
業務がどこで始まり、どこで終わったと判断されるのか。その基準が空間として示されていない場合、確認や準備は自然に増えていきます。
人ではなく設計を見直す
業務の重複は、現場努力や注意喚起だけでは減りません。ルールを増やしても、完全な解消にはつながらないケースが多く見られます。
整理の余地があるのは、業務が発生する前提となっている設計そのものです。
どの場所で、誰が、どこまでを担うのか。この前提を空間として整理することで、業務の重なり方は変わっていきます。
最後に
業務が重なっている状態は、クリニックが誠実に運営されている証でもあります。一方で、その構造を把握しないまま規模が拡大すると、時間や負荷として経営に影響が出てきます。
設計の段階で整理できることは、実はまだ多く残されています。
ぜひお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
株式会社SPACE PRODUCEでは、働く方のエンゲージメント調査やヒアリングを実施し、ただの設計・内装にとどまらず、クリニック運営に関わる皆さまに向けて、より価値ある空間デザインをご提供いたします。



