クリニックを開業する際、立地や賃料に目が行きがちですが、見落としてはいけないのが「空間条件」です。
天井の高さや電源容量、給排水設備といった要素は、契約後に修正するのが難しく、後から大きなコストや時間のロスにつながる場合があります。本記事では、数多くの開業支援に携わってきた株式会社SPACE PRODUCEの小林佐理が、物件選びの段階で確認すべきポイントを解説します。
1. 後から直せない条件を最優先で確認する
結論から申し上げると、物件探しの段階で「構造的に変更が難しい部分」を優先してチェックすることが大切です。内装デザインや家具配置は工夫で補えますが、天井高や電源容量、給排水の位置などは建物の構造に深く関わるため、後から対応しようとすると莫大なコストが発生します。
2. 開業後のトラブルを未然に防ぐため
なぜ事前の確認が重要かというと、施工が始まってから問題に気づくと、工期の遅延や設計変更が避けられないからです。天井が低すぎて医療機器が設置できない、電源が足りず施術機器が同時稼働できない、排水設備が不足していて改修工事が必要になるなど、よくあるトラブルはすべて「空間条件」を見落とした結果です。つまり、開業の成功は物件選びの段階での冷静な確認にかかっているのです。
3. 具体的に確認すべき空間条件
私が現場で常にチェックしている要素を整理すると以下の通りです。
● 天井高
一般的なビルでは2.4m前後が多いですが、設備を吊るす、空調を効率的に設置するためには余裕のある高さが望ましい。閉塞感の有無も患者さまの心理に影響します。
● 電源容量
美容医療機器は想像以上に電力を消費します。契約前に電気容量の上限を確認し、必要に応じて容量を増やせるかを調べておくことが重要です。
● 給排水設備
洗面や施術に必要なシンクを増設する場合、既存の給排水の位置や容量がボトルネックになることがあります。水回りの制約は工事費用に直結します。
● 空調と換気
患者さまが長く滞在するクリニックでは空気環境が信頼感につながります。空調機器の設置スペースや換気の導線を確認することが必須です。
● 防音性能
カウンセリングや施術のプライバシーを守るため、防音の可否も確認しておくべき要素です。建物の構造次第で改善が難しいケースもあります。
4. 空間条件を把握することで得られる効果
物件の空間条件を正しく把握しておくと、設計段階で余計な迷いが減り、デザインの自由度が高まります。逆に条件を見誤ると「ここに機器が置けない」「配管が通らない」といった制約が生まれ、理想のクリニック像に近づけなくなります。つまり、空間条件の確認は、設計の可能性を広げるための第一歩なのです。
5. 専門家とともに確認する重要性
こうした空間条件は、図面だけでは判断が難しい場合が多くあります。実際に現場を歩き、寸法を測り、設備容量を調べることが必要です。経営者の皆さまだけで判断せず、設計会社や施工会社と一緒にチェックを行うことで、後悔のない物件選びが可能になります。
最後に
物件選びの段階で空間条件を丁寧に確認することは、開業後のスムーズな運営と余計なコスト削減につながります。天井高、電源容量、給排水など「後から直せない部分」を見極めてこそ、理想のクリニックづくりが実現できるのです。
ぜひ お問い合わせフォーム からお気軽にお問い合わせください。株式会社SPACE PRODUCEでは、働く方のエンゲージメント調査やヒアリングを実施し、ただの設計・内装作業にとどまらず、経営者、従業員の皆さまにとって、より良いオフィス空間をご提供いたします。