“無音”ではなく“静寂を設計する”

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“無音”ではなく“静寂を設計する”

美容クリニックにおいて、「音のない空間=心地よい空間」とは限りません。完全な無音は、人の感覚を研ぎ澄ましすぎ、かえって緊張や不安を生むことがあります。大切なのは、聴覚に寄り添う「静寂のデザイン」。本記事では、“心地よい静けさ”のつくり方について株式会社SPACE PRODUCEの小林佐理が解説します。

“静けさ”をどう設計するか

静寂とは、音を消すことではなく「聴覚の安心をつくること」です。人は完全な無音状態では不安を覚える傾向があり、わずかな生活音や自然音があることで、安心感と居心地が生まれます。クリニック空間では、この“音の設計”が、患者様の心理的な安定に直結します。

静寂が生む安心感の理由

人の脳は、わずかな音でも意味を探そうとする特性を持っています。だからこそ、空調の低周波音や、隣の診察室からの話し声などが無意識にストレスになります。

一方で、やわらかなBGMや水音、木のきしみのような自然な音は「環境音」として受け入れられ、脳を安心させます。これは、音の心理的作用を利用した「サウンドデザイン」の一種です。

特に美容医療は、“美しさ”と“リラックス”の両立が求められる分野。音環境の設計が、空間の価値を左右するといっても過言ではありません。

空間デザイナーが実践する音のつくり方

「音源の方向」と「素材の反射」を徹底的にコントロールしています。

例えば、受付カウンターの背面に吸音パネルを組み込み、声が空間全体に反響しないようにする。BGMスピーカーを天井からの直接音でなく、壁面反射を利用してやわらかく響かせる。

さらに、水の音をデザインに取り入れるケースもあります。静かな空間にわずかに流れる水音を添えるだけで、心理的な“間”が生まれ、患者様の呼吸が整います。

音を完全に遮断するのではなく、「意図的に残す」。これが、静寂を設計する上で最も重要なポイントです。

素材と構造が決める“静けさの質”

静寂の演出は、素材選びにも大きく影響されます。

床材には、硬質なタイルよりも、足音を吸収するビニルタイルや木質素材を採用。壁面には、吸音クロスやファブリックパネルを用いて、話し声の反響を防ぎます。

また、診察室と待合スペースの間に中間層を設けることで、防音とプライバシーを両立できます。

こうした“静けさの質”を整える設計は、患者様だけでなく、医療スタッフの皆さまにとっても集中しやすく、穏やかに働ける環境をもたらします。

これからのクリニックに求められる音のデザイン

都市部だけでなく地方都市でも「静けさ」を価値として求める患者様が増えています。

SNSやAIによって情報があふれる時代だからこそ、クリニックに訪れた瞬間に“心が落ち着く音”があるかどうかが、選ばれる理由になります。

デザインとは、見た目だけでなく「聴覚を整えること」。この考えを取り入れるだけで、空間の印象は驚くほど変わります。

最後に

静けさを「演出」ではなく「設計」する。それは、患者様の心の動きを想像しながら空間をつくることに他なりません。

ぜひお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。株式会社SPACE PRODUCEでは、働く方のエンゲージメント調査やヒアリングを実施し、ただの設計・内装にとどまらず、クリニック運営に関わる皆さまに向けて、より価値ある空間デザインをご提供いたします。