二院目・分院展開を見据えた空間設計

#店舗・クリニック

ブランド統一と差別化を両立させるデザイン戦略

クリニックを二院目、三院目と拡大していくとき、経営の課題となるのが「ブランドの統一」と「地域ごとの違いをどう出すか」です。単なる内装のコピーではブランド価値が弱まり、かといって院ごとにバラバラでは信頼性を失ってしまいます。株式会社SPACE PRODUCE 小林佐理が、数多くのクリニック設計を手掛けた経験から、分院展開における空間設計の考え方を解説します。
 

1. ブランドを守る統一性の重要性

分院展開でまず意識すべきは「同じブランドである」という安心感です。
受付カウンターの素材やサイン計画、照明のトーンなど、共通するデザイン要素を持たせることで、患者様はどの院に来ても一貫した体験を受けられます。これはサービスの品質を保証する視覚的な証拠でもあり、経営全体のブランド力を支える基盤となります。
 

2. 地域性を取り入れる差別化の考え方


一方で、すべての院を同じ雰囲気にしてしまうと「どこも同じで印象に残らない」と感じられることがあります。
地域性やターゲット層を踏まえた差別化が欠かせません。

例えば、都心のオフィス街ではモノトーンを基調にした洗練された雰囲気が合いますが、住宅地に立つ院では温かみのある木素材や柔らかな照明が安心感を与えます。地域の生活環境に合わせたデザインは、リピート率にも影響を与える大切なポイントです。
 

3. 統一と差別化を両立させるデザイン手法

両立のコツは「必ず守る軸」と「柔軟に変える部分」を分けて考えることです。

● 軸(統一部分):ロゴ・ブランドカラー・サイン計画・基本的な導線。
● 柔軟に変える部分:素材感・家具・香り・アート演出。

私が過去に担当した事例では、すべての院で同じカラートーンを採用しながら、院ごとに異なる「香り」や「壁面アート」を加えることで、統一感とオリジナリティを両立しました。来院される方々が「同じブランドだけれど、この院ならではの空気感がある」と感じることが、差別化に直結します。
 

4. 展開を見据えた設計の視点

分院は一度作って終わりではなく、将来さらに拡大していく可能性を持ちます。そのため最初の段階で「デザインコード(設計の共通ルール)」を整えておくことが重要です。
これがあることで、新しい院を立ち上げる際にも短期間で設計を進められ、コストの最適化やオペレーションの効率化が可能になります。経営戦略としての「空間設計」が、長期的な収益性を支えることにつながります。
 

最後に

二院目・分院展開は、単に院の数を増やすのではなく、ブランドの価値を広げる大きな転換点です。空間設計において「統一」と「差別化」をどうバランスさせるかが、成功の鍵を握ります。
ぜひお問い合わせフォーム からお気軽にお問い合わせください。

株式会社SPACE PRODUCEでは、働く方のエンゲージメント調査やヒアリングを行い、設計や内装にとどまらず、クリニック経営に関わる皆さまにとって本当に価値ある空間デザインをご提供いたします。