日本では、肥満体型の人が増えてきていると言われています。肥満は高血圧、糖尿病、動脈硬化などにつながるリスクがあるため、解消・予防できるならばそうしておきたいところです。そうした観点から、オフィスが健康経営を志す上でどうあるべきか、アドバイスやアイデアを紹介していきます。
肥満が社員だけでなく会社にとっても良くない理由
肥満は、前述のとおり高血圧や糖尿病、動脈硬化などに加えて、進行すると脳卒中などの危険性もあり、命に関わってくることもあります。個々人レベルでそれらが、不利益なのは言わずもがなだと思いますが、会社として社員が健康であることはメリットしかありません。
単純に労働力が減ることはマイナスですし、能力を発揮するのに妨げとなるようなリスクは少ない方が良いということも想像に難しくないことでしょう。能力で優劣をつけるわけではありませんが、優秀な人材であればなおさらのこと、健康的に長く働いてほしいというのが会社としての本音でしょう。
自席の「座りすぎ」は良くない 肥満の原因にもなりうる
シドニー大学の調査によれば、世界20カ国で調べた労働時間における総座位時間は、日本が最長の7時間だったそうです。そして、この座る時間の長さは肥満をはじめ、前述のような病気、はたまた死亡リスクとの関連も知られているようです。オフィスワーカーが、その問題に対処するのはなかなか簡単なことではりませんが、オフィス環境で改善することはできるでしょう。
スタンディングデスク
近年では、取り入れている企業も増えてきたスタンディングデスク。文字通り、立ってパソコン作業などを行えるような高さのデスクです。デスクの高さ調節が自由に行えるタイプのものなどもあるようです。同じ体制や姿勢で仕事をし続けることがよくないのであって、同様にずっと立って仕事をし続けることもよくありませんので、使い分けることを意識することが大切になります。
バランスボールチェア
座っているだけで体幹を使うことになり、腹筋が鍛えられるほか、バランスを取るために小まめに動いたりすることで血行もよくなり、それらによってカロリーも消費。すなわち、肥満の解消にも効果的ということです。近年は、オフィスなどに導入されることを目的として作られた製品もあるので、そうしたものを取り入れてみてはいかがでしょう。
ABWやフリーアドレスの採用で立って動く必要性を
厳密な意味は異なりますが、社員が自由に働く場所を選べるという部分は共通するABWやフリーアドレス。視点を変えれば、皆がバラバラに働いているため、直接話しがしたいなら、そこまで移動する必要があります。これらを採用した企業の多くが、活用されていなかったデスクを減らすことに成功しており、その分オフィスの面積を有効活用することができます。通路やデスクレイアウトに余裕を持たせ、行動しやすいようにすることもポイントです。
社員に食事内容や回数の見直しの機会を与えられる施策
バランスの取れた食事が大切なのは、言わずもがなだと思いますが、わかっていてもなかなかそうできない人は多いものです。会社としては、社員食堂を作ることができるなら、それが最も良い施策となるでしょう。しかし、コストもかかり、スペースも必要なため、現実的ではない企業の方が多いはずです。
社食の設置が無理でも、最近では「置き社食」というサービスを導入する会社が増えているようです。置き社食とは、栄養バランスの整った調理済みの食事を置いておく装置があり、そこに並んだ食事を社員が選んで購入するような新しい形の社食と考えてよいでしょう。
また、食の欧米化、とりわけ肉食の多さは大腸がんの原因にもなっていると言われています。少しでもバランスの取れた食事を取れる環境下に社員を置く方が双方にとって長期的視野に立った時、有意義であると言えそうです。そこで、しいて言えば置き社食を設置する場所、つまりフリースペースやリフレッシュルームのような場所があると、社員もよりそうした福利厚生を利用しやすいのではないでしょうか。
朝食抜きは肥満になりやすい
朝食を抜くと、その後の食事後の血糖値が上昇しやすく、肥満になりやすいという研究結果があるそうです。朝食を食べる場所は会社ではないので、個々人次第と言えばそれまでですが、朝食を抜かなければいけない原因の改善は、会社が協力できるところはあるかもしれません。
たとえば、会社の立地が多くの社員にとって時間を要してしまうような場合や、出社時間が著しく早いなどの規則によって、朝食を抜きがちになっている社員がいるかもしれません。移転などで場所を変えたり、出社時間のルールを変えたり、会社として検討の余地はあるかもしれません。
まとめ
結局のところ、肥満やその先に潜む大きな病気なども、原因を突き詰めれば食生活や運動習慣に行き着きます。個人差もあり、セルフコントロールが必要なのはいうまでもありませんが、「オフィスで週5日、8時間前後の時間を過ごしている社員に対してできること」を考えることも、労働力、人材確保・定着のための福利厚生の一貫として必要になってくると思います。コロナ禍によって、テレワークが促進されたことにより、肥満率が上がったなどという話も耳にします。通勤という行為自体もそうですが、出社したら既述のような環境があるとしたら、社員にとって出社の動機となるかもしれません。