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健康経営オフィスの重要性

#健康運営

肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態を指す「ウェルビーイング(well-being)」という言葉。日本の生産年齢人口が減少している中で、生産性を上げることと同時に大切にしたいのが、従業員の健康の維持・増進です。そのために必要な健康経営とは、どういうものなのでしょう。その中でオフィス環境が担うことができる役割について考えていきます。

健康経営とは


経済産業省が発表したレポートによると「『健康経営』とは、従業員の健康保持・増進の取組みが、将来的に収益性等を高める投資であるという考えの下、従業員の健康管理を経営的な視点から考えて、戦略的に取り組むことです。企業が従業員の健康づくりを経営的な視点でとらえ、戦略的に取り組む事は、従業員や組織の活性化をもたらし、結果的に企業の業績向上や株価向上につながることが期待されます。また、国民の QOL(生活の質)の向上や国民医療費の適正化など、社会課題の解決にも貢献することができます。」(「健康経営オフィスレポート」より引用

健康経営オフィスとは


先述のレポートでは、健康経営オフィスについても定義がありました。内容は以下。
「健康経営オフィスとは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことです。」

健康経営のメリット


先述の経済産業省のレポートによると、下記の項目の改善が効果として期待できるとされています。また、そのほかにも「健康経営オフィスが、単に疾病予防に貢献するだけでなく、従業員、そして企業がよりイキイキと活気溢れる状態へ導くことを目指す」ことができるものであると記載されています。そのほかにも医療費の削減、離職率低下にも効果があるでしょう。

■運動器・感覚器障害
(例)頭痛、腰痛、肩こり、眼精疲労

■メンタルヘルス不調
(例)メンタルストレス、ワーク・エンゲージメント(働きがい)、うつ病

■心身症(※心身症の内、ストレス性の内科疾患)
(例)動機・息切れ、胃腸の不調、食欲不振、便秘・下痢

■生活習慣病
(例)肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、脳卒中、心臓病

■感染症・アレルギー
(例)風邪、インフルエンザ、花粉症、その他アレルギー

健康経営オフィスの具体例


①オフィス内緑化
人の視界に占める緑の割合を測る指標で、緑の多さを表すものとして「緑視率」というものがあります。簡単に言えば、「視界にどれだけ植物(緑)があるか」ということ。その数値が10〜15%の状態であると、集中力を高めることができると言われています。デザイン・レイアウトの段階で検討したい部分です。

②フリースペース、マグネットスペース
コミュニケーションは、業務を効率化するだけでなく、時には仕事と関連のない会話によって笑顔が生まれたり、相手の人間性を知れたりといったメンタルやストレスの部分に良い影響を及ぼすことも期待できます。

③カフェスペース、リフレッシュルーム
毎日オフィスで8時間前後、PCと向き合って仕事をしていると、疲労も出てきますし、空腹、眠気など、さまざまな体の変化が起こります。そうした時に、気軽に軽食を取ったり、音楽を聴いたり、仮眠を取ったりなど、何らかの改善策が採れるような空間があると、その後の作業効率の改善が期待できます。

④スタンディングデスク
同じデスク、同じチェアで長時間PCに向き合っていると、体勢も変わらず、肩こり、腰痛、眼精疲労などさまざまな影響が現れ始めます。そうならないように、立ってPC作業ができたり、打ち合わせができたりする什器、空間に需要の高まりが見られます。

⑤防音された個室
業務の中には、誰にも邪魔されず黙々と続けたいものであったり、会話の内容をあまり聞かれたくない事柄などもあります。従業員それぞれに何をノイズと感じるかであったり、反対にどういうことを周りに知られたくないかなどといった感覚の基準は異なります。そうしたストレスに対応できる空間は重宝されやすいです。

⑥社員食堂
食生活は、直接的に従業員の健康に影響します。身体は仕事においての重大な資本ですから、生活習慣病などの予防に寄与できるのであれば、長期的な投資です。

⑦IOTと感染症対策
勤怠管理の顔認証システムでの検温の連動などのシステム導入、感染予防を意識したデスクレイアウトなど、ウィズコロナを意識したニューノーマルを取り入れる必要があります。

まとめ

“不健康経営”なオフィスでも、これまで多くの人材が活躍し、活躍・出世してきたことだと思います。それはある意味、長時間労働の中で、ストレスにも耐え、健康を害するほど身を削って働いた結果、生き残ることができた人たちであったと言えるのではないでしょうか。精神的、肉体的、社会的な苦痛によって活躍できない、さらには離職してしまうとなると、そこにかかるコストは企業にとって軽視できるものではありません。また、出社してもやる気が出ない、パフォーマンスが乏しい中で働く(プレゼンティーズム)や体調不良などによる欠勤が続く(アブセンティーズム)中では、生産性の高い好循環は生まれにくいはずです。生産年齢人口が減少している昨今では、前述の優秀な人物だけが活躍できる過酷な“選抜制度”のような職場環境を設けるよりも、健康経営が意識されたオフィスの中で、誰しもが一定のパフォーマンスを発揮できるオフィスが必要になってきています。