ザイマックス不動産総合研究所が発表した「大都市圏オフィス需要調査 2022秋」によると、コロナ禍と比べてオフィスへの復帰、オフィスの活用法、サテライトオフィスの需要などに変化が見られているようです。その結果から、現在のオフィスのトレンドを探っていきます。
会社の在籍人数は増えてきているが、対するオフィス面積は増えていない!?
ザイマックス不動産総合研究所の『2022秋』の発表によると、在籍人数が「増えた」と回答した割合は「24.8%」と2022春と比べて2.4ポイント増加。「減った」という回答も1.6ポイント減少しており(「変らない」0.4ポイント減)、それぞれ2021春から継続した在籍人数の増加傾向を示しています。
それに対して、オフィス面積はどうなっているかというと、「拡張した」という回答は2020春・秋の調査で減少を辿り、そこからは少しの増減を繰り返す横ばいとなっています。一方で「縮小した」という回答は2020春まで2%台後半付近だったものが、2021秋には9%まで増加しました。しかし、そこから2022秋までに7.6%へ数値を落としています。
つまり、在籍人数は増やしたものの、オフィスは縮小したままないし、変えていないという傾向ということで、テレワークの定着を物語る結果となっています。コロナ禍前と比べて「縮小した」傾向が強いのは、オフィスの機能を「出社の必要がある人が集まる場所」に変化させた企業が増えてきているとも言えそうです。
根強いテレワーク需要 一方でサテライトオフィスの需要も
前述の傾向は同発表にはっきりと出ています。テレワークを実施している会社は「2019秋」まで30.7%でしたが、2020春の調査で51.3%に増加。その後2021秋までに68.5%まで増え続け、コロナ禍の落ち着きが見えてきた2022春に一度62.4%に減少したものの、その後のコロナ患者の増加の影響もあってか、最新の2022秋では69.2%と最高値を記録し、コロナ禍前に戻るようなことはしばらくなさそうな気配です。
他方、同調査ではサテライトオフィスは2019秋に20.2%を付け、2022秋に一度17.0%まで下がった(コロナ禍で出社しづらい状況になったのではないか)ものの、そこから2022秋にかけて28.5%まで上昇を示していました。しかし、利用状況にはまだまだ改善の余地もあるようです。
テレワークの問題点はやはりコミュニケーション
同調査の中で、改めて顕著に明らかになったのが、コロナ禍で会社の社員はコミュニケーションに苦労しているということでした(2021秋=49.2%、2022秋=57.0と増加傾向)。その次に回答の割合が高かったのも「マネジメント」であり、こちらも大枠としてコミュニケーションと関連していると見ることもできます。こうした背景からも、出社とテレワークを併用できるハイブリッドワークが普及すべく広がっているのでしょう。
その一方で、「従業員の生産性・業務効率の低下」という回答は32.9%(2021秋)から22.4%(2022秋)と10.5ポイントの減少が見られており、コミュニケーション以外の部分の運用は改善が見られているようです。
職場環境の見直しを考えている企業は多い
同調査では、近年のコロナ禍を受けて、すでにオフィス環境の見直しに着手した企業、以下数年内の着手予定、時期未定の着手予定の企業の合計の割合が63.4%だったとしています。同じく、オフィス見直しの中で感心のある施策については、前述の話からをわかるように「コミュニケーションのための場づくり、集まるための機能を重視する」が最多(48.1%)で、次いで「リモート会議用に個室やブースを増やす」(44.0%)と、こちらもコミュニケーションに対するオフィス機能への需要となっています。
旧来多く見られた部署別に区切られた島型のレイアウトではなく、フレキシブルなレイアウトや制度(フリーアドレスやABWなど)も必然的に求められていることがわかる結果(3番目に多い回答)でした。オフィスにいる顔ぶれ、数に変動性があるのであれば、省スペースとして効率的ですし、その分上記のコミュニケーションのための場づくりもしやすくなります。
まとめ
働き方はコロナによって大きく変更を余儀なくされましたが、ここに述べてきた通り、大都市圏の企業はここにきて上手く順応できている兆候が見られるようになりました。会社におけるコミュニケーションの問題は、コロナ禍に始まったものではありませんが、社員同士が物理的に遠ざかる中で、多くの課題が生まれているのも事実です。そうした中で、求められるのが過去記事でも多く述べてきたハイブリッドワークに適したオフィス。つまりは、フリーアドレス、ABWやオープンなミーティングスペースなど、柔軟なコミュニケーションが取りやすい空間です。ぜひ、過去記事も参照してみてください。