緑視率という言葉を知っていますか? 文字通り緑、植物等が視界にしめる割合を指します。この緑視率という言葉が近年、オフィスデザインを考える上で大切にされるようになってきました。緑がオフィスに取り入れられることのメリットやその背景などを解説します。
緑視率とは? どんなメリットがあるの?
緑視率
人の視界における草木、すなわち緑の多さを計る割合のことです。もともとは街づくりのために作られた指標でしたが、近年、オフィスレイアウトなどにも取り入れられるようになってきました。国土交通省が発表(平成17年)したところによると、緑視率が高いほど、多くの人は安らぎを感じることがわかっており、そうした効果に着目するようになったからです。以下に具体的な効果を紹介します。
緑視率のメリット1・従業員の生産性や集中力を高める
集中力を高めるには10〜15%の緑視率が良いそうです。オフィス内に緑を取り入れる場合、すぐに思い付くアイデアとしては観葉植物を配置することでしょう。ただ、たかが10〜15%と思うかもしれませんが、屋内でそれを実現するのは簡単そうで簡単ではありません。近年は、デザインとして壁面に人工植物を取り入れることも増えてきました。
緑視率のメリット2・ストレスの軽減
千葉大学、兵庫県立大学、大阪大学の調査によると、緑はストレスを軽減させる効果があることがわかりました。人間がストレスを感じると、コルチゾールやカテコールアミンというストレスホルモンを分泌します。強いストレスは急性胃潰瘍を引き起こしやすかったり、コルチゾールの分泌は血圧に悪影響を及ぼしたりもするそうです。健康経営の観点からも緑視率の考え方は大切だと言えます。
緑視率のメリット3・眼精疲労の回復
職業能力開発総合大学校が発表した研究結果(2012年)によれば、眼精疲労を和らげる効果をはじめ、疲労回復効果が期待できるということがわかっています。オフィスワーカーのほぼ全ての人がパソコンで仕事をしていますので、ノートパソコンの小さな画面をじっと眺めながらの仕事は、目の疲れに直結しています。人が見ることができる光の波長というものがあり、人の目の水晶体(レンズ)のピント調節機能は、視界の色によっても変化。色によってレンズを厚くしたり、薄くしたりという調整が図られる中で、波長の長さが丁度中間にあたる緑は水晶体を調節する毛様体筋に負担をかけにくいということです。
緑視率のメリット4・室内の空気清浄化
植物には空気中の有害物質を分解する天然の空気清浄作用があると報告されています。NASAの研究によると、密閉された宇宙船内に漂っていた300種以上の有機化学物質の除去に、植物の浄化作用が有効だったそうです。以下に、オススメの観葉植物8選を紹介します。
1. サンスベリア
2. スパティフィラム
3. ドラセナ・マッサンゲアナ
4. アレカヤシ
5. アロエベラ
6. ディフェンバキア
7. ポトス
8. アロマティカス
緑視率をオフィスデザインに取り入れるときの注意点
緑視率は高いほど良い訳ではない
緑視率は10〜15%が最適と先に述べましたが、これは高ければ高いほど良いということではないということを知っておく必要があります。空間に対する満足度は10%を超えると悪化していくそうです。また、知的生産性は10~12%がピークで、それ以上となると条件によって下がってしまうとのこと。だからこそ、10〜15%が良いのだとも言えます。
ストレス軽減効果はすぐに現れる訳ではない
前述の通り、植物には人間のストレスを軽減する効果があることは明らかになっているのですが、その効果に速効性は低いようです。むしろ、最初に拒絶反応がでることが多いそうで、一定の期間を置いてからは軽減していく効果が期待できるのだとか。そうした効果を望んでオフィスに緑を取り入れる場合、すぐに効果測定をしてもデメリットとなってしまう可能性があるので注意してください。
植物の管理や入れ替えなどにかかるコスト増
人工の植物ではなく、本物の植物を取り入れる場合、やはり生き物なので水やりなどの管理など様々なコストと労力がかかります。どこかに一定のリソースを割かなければいけないので、植物をオフィスに取り入れたいのであれば、手入れが比較的楽にできる植物を選ぶ必要があります。サンスベリアなどは、その観点からも評判は良いようです。
まとめ
「緑は目にいい」などということを、子どもの頃などに、正しい根拠など不明ながら聞いたことはありました。本当にそうだったようです。また、地方出身者でないとわからないかもしれませんが、帰省などで都会の緑を見る機会などになんとなく落ち着く感覚があったのも偶然ではないことがわかりました。「緑視率10〜15%」とは、簡単に言えば、ストレスや疲れをできるだけ少なく働くために必要なオフィス環境であると言えそうです。少子高齢化、労働人口減少という社会問題が深刻化する中では、いかに従業員のパフォーマンスを最大化するかが今後の企業活動のカギとなることは明らかです。ぜひとも、オフィスに緑を。