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クリエイティブオフィスに必要な「集中して働ける空間」

#オフィスレイアウト

集中して働くことができるオフィス


2007年に経済産業省が発表したクリエイティブオフィスという考え方。それによると「知識創造行動を誘発する空間、ICTツール、ワーカーへの働きかけなど(加速装置)と、組織目標とプロジェクト目標に向けたマネジメント(駆動力)の双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した場」と定義されています。

では、そのためにどんな空間が必要なのか、知識創造行動の妨げになっているケースから見ていきます。企業規模、オフィスの大きさなどにもよりますが、業務内容によって働くスペースが選べるなら、クリエイティブに働くことにとって良いことはありません。今回は集中して行うべき業務を中心に、そこに求めたい要素とそれが求められる背景を以下に個別に説明していきます。

ケース1:視野に入ってくるノイズが集中力を散漫にする


アメリカのプリンストン大学の調査によると、脳は構造的に視界に入ってくるモノの動きを認知してしまうそうです。つまり私たちの脳は視野に入ってくるノイズをシャットアウトできないということになります。さらに言えば、集中の妨げになっているということになります

そこで日本の多くの企業では、かねてよりいくつかのアイランド式(島型)のデスクレイアウトが選択されてきました。今後はコロナウイルスの影響で変化していくかもしれませんが、この形式の場合、社員各人の目の前には必ず別の従業員がいて、仕事をしています。いかに集中していようと、モニターの外にあるモノやヒトの動きなどに気を取られてしまっているのです。

【解決策】
解決策としては、フリーアドレス化によって、社員がその状況から逃れられるようにする方法もありますし、パーテーションのような視界を覆うオフィス家具を取り入れたり、レイアウトの変更をすることによって回避することが可能です。

ケース2:他者からの視線が気になって集中できない


これは実際に見られていても、見られていなくても、見られていると思い込んでしまう私たちの脳の構造に原因があるようです。企業としては「自意識過剰」の一言で済ませてしまってはいけない問題だと認識した方が、生産性の向上に繋がりそうです。

アイランド式のデスクレイアウトなら、前面にいる同僚はもちろん、左右の同僚からはもPC画面を見られているような感覚を覚えることになります。「お誕生日」にいる上司の存在などはその最たる例です。

【解決策】
問題の性質的にケース1と近しい部分があるため、解決策もABWやフリーアドレスやレイアウト変更などで対応ができます。従業員の管理する意味合いで、ICTを活用して業務効率を可視化するなど、目視・監視ではない制度設計などがあると良いでしょう。

ケース3:電話の声が文字通りのノイズに


他者が隣同士で行なっている会話が気になる、作業で発生する音(タイピング音)が気になるということはあると思います。しかし、それらはオフィスで働いている以上、ある程度避けられない音だと思います。また、そうした音でも、一定の範囲内であれば、むしろ無音の空間よりは集中がしやすいという報告などもあります。

一方で、電話で通話中の会話はかなり集中の妨げになります。なぜなら、一方の人間の会話だけが聞こえてくるからです。そうすると、片一方だけの会話を聞かされている人間は、通話相手が何を言っているのだろうと、勝手に勘繰ってしまうようです。つまり同僚が「申し訳ございません。添付して再送いたします」と通話しているとしたら、メールにファイルを添付し忘れて送信したことを指摘されているのだろう、脳が情報処理してしまうということ。

【解決策】
この解決策としては、個室、半個室などの個人ブースなどの設置、またはオフィスレイアウトの時点でのゾーニング(どの空間をどのように使うか)で、電話でのやり取りの多い部署、コールセンターなどはエリアを決めて配置するなどの対策が考えられます。

ケース4:ストレスや疲労感による集中力低下


感じ方に個人差はあれど、仕事の上で人間関係や業務量などによって、大なり小なりストレスや疲労を感じてしまうものです。長時間のデスクワークにより、腰痛や肩こりを感じたり、モニターを眺め続けることによる眼精疲労などは、肉体的な不具合によって集中が削がれていきます。

ちなみに、座っている姿勢の方が、直立しているときよりも、腰への負担はかかっているそうです。ストレスに関しては、根元がそれぞれに違うため、共通の解決策を導きだすことは難しいかもしれませんが、いずれもゼロにすることは現実的ではありませんが、オフィス環境によって度合いを低減させることは可能です。

【解決策】
人間工学に基づいたチェアや立って作業ができるスタンディングデスクなどオフィス什器の充実により肉体的な負荷は軽減できます。また、人がストレスにさらされた際に分泌される「コルチゾール」という物質の増加率を抑えたり、眼精疲労を和らげる効果、空気清浄効果が高いとされるオフィス内の緑化による緑視率(人の視界に占める緑の割合。10〜15%が最も集中力を高められる)の向上なども見直すべきポイント。オフィスデザイン、ゾーニングの時点で考えておきたいところです。

まとめ

集中力は作業をするにも、発想を生み出す際にも、あらゆる局面で必要な力です。それを高め、維持させられる環境を提供できてこそ、社員の生産性は向上します。生産性が上がり、評価してもらえた社員はより仕事にコミットするようにもなるでしょう。こうした好循環を生み出す上でも、オフィスデザイン、設計、ゾーニングは重要になります。