オフィス移転をする理由の多くは、事業拡大や社員増加に伴う面積不足、またはその反対での経費削減でしょう。後者はある意味では将来を見据えたポジティブな動きとも言えるので、ここでは前者にフォーカスし、オフィス移転で余計なコストを発生させないために気をつけること、コツについて紹介していきます。
オフィスに「今必要なこと」だけでなく「将来必要になること」も見据えた物件選びを
前述のように、床面積が足りないという会社にとっての直近の課題を解決したいという目的だけでは、オフィス移転が失敗してしまう可能性があります。中長期的な事業計画と照らし合わせて、今後の人員増加、テレワークの増減の可能性など、多角的に考える必要があります。
ここで計算違いが起きると、せっかくオフィスを移転したのに、すぐに新たな移転先を探さなければならなくなります。これはもはや追加工事以上のコストとなってしまうため、最も避けたいことです。ハイブリッドワークやテレワークの実施をしている企業であれば、目的によってオフィスを可変的に利用できるアジャイルオフィスを検討することも1つの手段となるでしょう。
物件の電気設備などのインフラも確認しておこう
電気設備などのインフラは、物件によって異なります。必ずしも移転先の物件が、今いるオフィスと同等のスペックを持っているわけではないのです。そこを思い違いしていると、移転後に追加工事が発生することがあります。
事業内容にもよりますが、たとえばサーバーを多く抱える会社だったとしたら、電気容量が不足する可能性があります。サーバールームを設置する場合、サーバーの規模などによっては空調機能が適切ではない可能性も出てきます。以下に、そうした追加工事を依頼する際にも面倒な手順が必要な場合があることについても解説します。ほかに、ビルのルールなどによって、工事が夜間にしか行えない場合もあります。その場合も工事費が高くつくことが考えられます。
工事依頼はビル管理会社の指定業者に限られる場合も
入居するビルによっては、ビル管理会社指定の工事業者にしか追加工事を発注できないというケース(B工事)もあります。この場合の工事費も入居する会社の負担となるのですが、管理会社を介しての発注となるため、通常の工事業者への依頼よりも費用が高くなることが多いようです。
B工事
入居する物件の専有スペースの一部で建物全体に影響を及ぼす可能性がある空調設備や防災設備、防水設備などに関わる工事。施工業者の指定はオーナーが行い、発注や費用負担は入居者が行うことになります。
C工事
専有スペースの中でB工事に該当しない部分の工事。クロス、床、建具や家具の設置など躯体に影響しない内装工事です。こちらは工事業者の指定、発注、費用負担の全てを入居者が行うことになります。
将来を見据えてアジャイルオフィスを用意しておく
昨今、業務効率を意識した働き方改革や健康経営など様々な観点からリフレッシュルームを設置したり、ライブラリーを設けたりしたオフィスが増えてきています。ただ、面積の問題もあって難しいという事情もあるでしょう。アジャイルオフィスとは、簡単に言えば「多目的スペース」なので、リフレッシュに使うこともできれば、レクリエーションを行ったりすることもできます。
企業を取り巻く環境は技術の進化だけでなく、昨今の感染症の流行など、様々な要素で変化を求められてしまうものです。そうした状況に直面したとき、内装のリフォームをする必要がないようにアジャイルオフィスにしておくことも将来的に有効かもしれません。
内装工事の仕上がりが不満で再工事が必要にならないような業者選びを
内装工事業者はたくさんあり、技術力やデザイン・提案力などは、素人目にはわかりにくいものです。オフィスに特化した設計・施工を行っている会社を選ぶ方が安心につながると思いますが、実績などはホームページなどで確認することをお勧めします。マッチングサービスを利用するなど、比較検討する方が、より良い内装工事業者と出会える可能性は高まると思われます。必ずしも「安かろう、悪かろう」ではありませんが、著しく安い見積もりには、安くなるだけの理由がある可能性もあるので、入念な検討を行うべきでしょう。
まとめ
今回は、立地的なブランド力や単に手狭さを解消したいというだけで物件を決めてしまうと、様々なリスクに晒される可能性があることを紹介してきました。追加工事だけで済めばまだよくて、仮に入居してすぐに移転先を探さなければならなくなったとしたら、こんなに悲しいことはありません。オフィス移転の際には会社の将来性、成長性を見越した物件選択をして、できることなら追加工事が必要のない移転を実現してもらいたいものです。