社長席はいらない?

#オフィスレイアウト

かつて社長室といえば、企業の象徴としての意味合いが強く、「権威」や「統率力」を視覚化するための存在でした。

しかし、現在、その存在意義が見直され始めています。経営者の皆さまがあえて固定席を持たない選択をしたとき、どのような空間設計が求められるのか。空間デザインの観点から、フラットな組織づくりの可能性を紐解きます。
 

経営者の「席」をなくすという選択

経営者の皆さまが固定の席を設けないことで、組織全体の空気感に柔らかな変化が生まれます。空間が階層を示さなくなると、自然と人の距離も近くなり、働く方が声をかけやすくなります。結果として、コミュニケーション量の増加はもちろん、経営者の皆さま自身が現場の空気をリアルに感じ取ることができるようになります。

これは、単に「フリーアドレス」にするという話ではありません。経営者の皆さまが自ら「この空間にいつでもいる」という姿勢を示すことで、トップダウンではない、双方向の信頼が生まれやすくなるのです。
 

エンゲージメント向上に繋がる理由


固定席を持たないことは、意外にも従業員の皆さまの“安心感”を育みます。理由はシンプルで、顔が見える距離にいるということが、心理的な壁を取り除くからです。
設計段階で経営者の席を空間的に“特別扱い”しないことは、「組織の一員として対等に関わっていく」という無言のメッセージになります。

この視覚的な演出は、言葉以上に影響力があります。
とりわけ若い世代を中心に、「誰がどこに座っているかより、誰とどんな関係を築けるか」が職場選びの基準になってきている今、空間の設計思想も問われているのです。
 

意思決定のスピードにも影響が出る

席を隔てず、経営者の皆さまがオフィス内を自由に動けるようにするだけで、意思決定までのスピードが格段に上がるケースは多く見られます。
たとえば、気になるプロジェクトの進捗を自ら目にする機会が増えれば、細かな報告を待たずとも方向性の微調整ができます。

結果として、「経営判断のタイムラグ」が小さくなり、現場との距離感が縮まるのです。
このような空間デザインは、マネジメントを“俯瞰”ではなく“伴走”に変える力を持ちます。席という物理的な枠組みを外すことで、組織の動きそのものがなめらかになるのです。
 

空間設計の工夫で「不在感」を解消

とはいえ、席をなくすことで「社長がどこにいるのかわからない」という不安を持たれることもあります。そこを丁寧に設計で補うことがポイントです。
たとえば、定位置に“経営者の皆さまが使う傾向が強い”エリアを設けたり、「ここにいるときは声をかけて良い」という合図となるサインのデザインを施すことで、曖昧さを心地よい曖昧さへと昇華できます。

これは、空間が言葉を持つという考え方。物理的に姿がなくても、空間がその存在を伝えてくれる設計を目指すべきです。
 

最後に

経営者の皆さまが固定席を持たないという選択は、単に「自由な働き方」に合わせた施策ではありません。それは組織の“在り方”を空間を通じて問い直す、本質的な経営判断とも言えます。
社長席をなくすことが目的ではなく、それを通じて、何を見せ、何を伝え、どんな信頼関係を育てたいのか。

その問いに明確な答えを出すことこそが、これからの空間設計に求められている視点です。

続きが気になる方は、ぜひお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。株式会社SPACE PRODUCEでは、働く方のエンゲージメント調査やヒアリングを実施し、ただの設計・内装作業にとどまらず、経営者、従業員の皆さまにとって、より良いオフィス空間をご提供いたします。